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頭痛
/ 頭が痛い / Headache
更新日:2020-11-28
著者: 獨協医科大学脳神経内科 平田幸一 先生
監修: 群星沖縄臨床研修センター 徳田 安春 先生

概要・定義

 頭痛とは,主に目を含めた鼻根から眼窩上縁を通って外耳道に達する線より上方と,後頭部や眼窩の痛みを意味する.

分類

 頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分類される.

 一次性頭痛とは症候(症状)によって診断される頭痛疾患であり,特に基礎疾患がなく機能性に頭痛を生じるものである.

 二次性頭痛とは基礎疾患の症候として頭痛を生じるものである.

疫学

 一生のうち,96%が頭痛を自覚する,頻度の高い症候である.
 一次性頭痛では人口の15%が片頭痛を,80%が緊張型頭痛を有する. [BMJ. 2007 Feb 3; 334: 254-6]
 本邦では,8.4%が片頭痛を,22.3%が緊張型頭痛を有する. [Cephalalgia. 1997 Feb;17(1):15-22.]
 欧米と比較して,くも膜下出血の頻度が高い. [Lancet. 2017 Feb 11; 389(10069):655-666]

日常診療でよくある頭痛の原因

 片頭痛
 緊張型頭痛
 後頭神経痛
 副鼻腔炎
 うつ病

重篤な頭痛の原因

 くも膜下出血
 髄膜炎
 脳炎
 巨細胞性動脈炎(旧:側頭動脈炎)
 頭蓋内占拠性病変
 頭蓋内出血・脳梗塞
 椎骨動脈解離
 緑内障発作
 その他(高血圧性脳症,下垂体卒中,脳静脈洞血栓症,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS),一酸化炭素中毒等なども頻度は高くないが重篤な予後をきたす疾患である)

稀な頭痛の原因

 褐色細胞腫,緑内障発作,巨細胞性動脈炎,群発頭痛

図表1 キーワード毎の鑑別疾患

1-1 突然発症の頭痛

 鑑別:くも膜下出血,片頭痛,椎骨動脈解離,脳出血,脳梗塞,脳腫瘍内出血
 次の一手:頭部CT,髄液検査,頭部MRI,頭部MRA

1-2 発熱・炎症を伴う頭痛

 鑑別:発熱に伴う頭痛,急性副鼻腔炎,ウイルス性/細菌性髄膜炎,丹毒/蜂窩織炎,巨細胞性動脈炎,脳炎,脳膿瘍,感染性心内膜炎
 次の一手:CRP,ESR,髄液検査,胸部X線,副鼻腔X線,副鼻腔CT,側頭動脈生検

1-3 悪化傾向の頭痛

 鑑別:ウイルス性/細菌性髄膜炎,脳腫瘍,髄膜癌腫症,下垂体卒中,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)
 次の一手:頭部CT,髄液検査,頭部MRI,頭部MRA

1-4 高齢者の初発頭痛

 鑑別:巨細胞性動脈炎,脳出血,脳梗塞,後頭神経痛,帯状疱疹
 次の一手:採血検査(CRP,ESR),水疱中抗VZV抗体,髄液検査,頭部CT,頭部MRI,頭部MRA,側頭動脈生検

1-5 免疫不全の患者の頭痛

 鑑別:髄膜炎,脳膿瘍,帯状疱疹,心臓性頭痛,下垂体卒中
 次の一手:採血検査(WBC, CRP),血液培養,髄液検査・培養,頭部CT,頭部MRI

1-6 いつもと異なる,精神・神経症状を認める頭痛

 鑑別:髄膜炎,脳炎,髄膜癌腫症,くも膜下出血,脳出血,脳梗塞
 次の一手:採血検査(WBC, CRP),髄液検査・培養・細胞診,頭部CT,頭部MRI,頭部MRA

1-7 外傷後の頭痛

 鑑別:急性硬膜下血腫,慢性硬膜下血腫,急性硬膜外血腫,急性外傷後頭痛,外傷性くも膜下出血
 次の一手:頭部CT,頭部MRI

2-1 神経痛様頭痛

 鑑別:後頭神経痛,帯状疱疹,三叉神経痛,鼻毛様体神経痛,一過性表在頭痛
 次の一手:頭部CT,頭部MRI

2-2 眼周辺を中心とした頭痛

 鑑別:帯状疱疹,三叉神経痛,緑内障発作,群発頭痛
 次の一手:眼圧測定,頭部CT,頭部MRI

2-3 自律神経性頭痛を示唆する頭痛

 鑑別:群発頭痛,緑内障発作,SUNCT, SUNA,発作性片側頭痛
 次の一手:頭部CT,頭部MRI

2-4 嘔気/嘔吐/食欲低下を伴う頭痛

 鑑別:片頭痛,ウイルス性/細菌性髄膜炎,脳出血,脳梗塞,くも膜下出血
 次の一手:採血検査(WBC, CRP),眼圧測定,髄液検査・培養,頭部CT,頭部MRI

2-5 鼻汁/鼻閉/先行する感冒症状を伴う頭痛

 鑑別:発熱に伴う頭痛,急性副鼻腔炎,群発頭痛,鼻毛様体神経痛
 次の一手:採血検査(WBC, CRP),副鼻腔X線

2-6 誘因の明確な頭痛

 鑑別:片頭痛,三叉神経痛,労作性頭痛,性交時頭痛,入浴時頭痛
 次の一手:頭部CT,頭部MRI,髄液検査

2-7 後頭部の頭痛

 鑑別:後頭神経痛,くも膜下出血,椎骨動脈解離,急性心筋梗塞,巨細胞性動脈炎
 次の一手:頭部CT,頭部MRI,髄液検査

2-8 不眠/ムード低下/喜びの喪失を伴う頭痛

 鑑別:うつ病による頭痛,睡眠時無呼吸症候群,身体症状症
 次の一手:ポリソムノグラフィー

2-9 朝方に悪化する頭痛

 鑑別:睡眠時無呼吸症候群,うつ病による頭痛,群発頭痛,脳腫瘍,アルコール誘発頭痛,片頭痛
 次の一手:頭部CT,頭部MRI

3-1 片頭痛様の頭痛

 鑑別:片頭痛,片頭痛と緊張型頭痛の併存,CADASIL,後頭葉てんかん
 次の一手:初発時は頭部CT,頭部MRI

3-2 反復性の頭痛

 鑑別:片頭痛,緊張型頭痛,後頭神経痛,三叉神経痛,群発頭痛
 次の一手:初発時は頭部CT,頭部MRI

common 日常診療でよくある原因

 鑑別:片頭痛,緊張型頭痛,後頭神経痛,副鼻腔炎,うつ病による頭痛
 次の一手:副鼻腔X線/CT

鑑別疾患一覧

 一次性頭痛 

 片頭痛: 片頭痛,網膜片頭痛,片麻痺性片頭痛,脳底片頭痛,慢性片頭痛

 緊張型頭痛 :緊張型頭痛

 三叉神経・自律神経性頭痛 :群発頭痛,発作性片側頭痛,結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT),頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNA),持続性片側頭痛

 その他一次性頭痛 :一次性咳嗽性頭痛,一次性雷鳴頭痛,一次性運動時頭痛,寒冷刺激による頭痛,入浴時頭痛,一次性穿刺様頭痛,貨幣状頭痛,性行為に伴う一次性頭痛,睡眠時頭痛,クラスター・チック症候群,新規発症持続性連日性頭痛

 二次性頭痛 

 血管 

 頭頚部 :脳出血,脳梗塞,椎骨動脈解離,くも膜下出血,内頚動脈解離,脳動脈瘤,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS),脳静脈洞血栓症,硬膜動静脈瘻,脳空気塞栓症,急性硬膜下血腫,慢性硬膜下血腫,急性硬膜外血腫,内頚動脈-海綿静脈洞瘻,可逆性後頭葉白質脳症(RPLS),もやもや病

 脳血管以外 :心臓性頭痛,慢性心不全,高血圧性脳症,高血圧性頭痛,肺動静脈瘻

 感染症 

 ウイルス感染症 :ウイルス性髄膜炎(とくにCOVID-19に注意),ウイルス性脳炎(ヘルペス脳炎,HHV-6脳炎),帯状疱疹,伝染性単核症,急性肝炎,急性HIV感染症候群,後天性免疫不全症候群,重症熱性血小板減少症候群,デング熱,パルボウイルスB19感染症,モラレ髄膜炎

 細菌感染症 :細菌性髄膜炎,脳膿瘍,硬膜下膿瘍,丹毒,蜂窩織炎,感染性心内膜炎,肺炎に伴う頭痛(レジオネラ肺炎,マイコプラズマ肺炎,COVID-19肺炎など),神経梅毒,日本脳炎,ツツガムシ病,ライム病,Q熱,ブルセラ症,オウム病,脳室シャント感染

 その他感染症 :結核性髄膜炎,結核腫,真菌性髄膜炎,鼻脳型ムーコル症,マラリア,ウェステルマン肺吸虫,広東住血吸虫,旋毛虫症,有鉤のう虫症,トキソプラズマ脳炎,グラデニーゴ症候群(Gradenigo syndrome)

 脳神経ニューロパチー :後頭神経痛,三叉神経痛,帯状疱疹後神経痛,鼻毛様体神経痛,舌咽神経痛,中間神経痛,レイダー傍三叉神経症候群,再発性有痛性眼筋麻痺性ニューロパチー

 腫瘍 :下垂体卒中,第3脳室コロイドのう胞,髄膜癌腫症(癌性髄膜炎),脳腫瘍(上衣腫,希突起膠腫,膠芽腫,髄膜腫,松果体のう胞,血管芽腫など),転移性脳腫瘍,大脳神経膠腫症(gliomatosis cerebri),原発性びまん性軟髄膜グリア神経細胞腫瘍(PDLG),骨パジェット病

 筋骨格系 :脊髄空洞症,キアリ奇形,頚性頭痛,頚椎症,頚椎偽痛風(Crowned dens syndrome)

 薬剤性 :薬物乱用頭痛, 混合性結合組織病に対するNSAIDsの使用,クロロキン,エフェドリン,エルゴタミン,イソニアジド,フェナセチン,レセルピン,テオフィリン,カフェイン,リバスチグミン,MAO阻害薬,クロゴケグモ咬傷,アルコール誘発頭痛,硝酸塩を含む薬剤,ステロイド,経口避妊薬,急性放射線症候群

 中毒性 :ヒ素中毒,ヒスタミン中毒,トルエン中毒,メチルアルコール中毒,鉛中毒,一酸化炭素中毒,アンフェタミン中毒,ベンゼン中毒,ビタミンA過剰症

 自己免疫 :視神経炎,トロサ・ハント症候群,巨細胞性動脈炎,肥厚性硬膜炎,脳脊髄液リンパ球増加を伴う一過性頭痛および神経学的欠損症候群(HaNDL症候群),全身性エリテマトーデス(SLE),強直性脊椎炎,SAPHO症候群,再発性多発軟骨炎,強皮症腎クリーゼ,神経スイート病,サルコイドーシス,ベーチェット病,急性散在性脳脊髄炎,抗NMDA受容体脳炎,自己免疫性脳炎,結節性多発動脈炎,高安動脈炎,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,ANCA関連血管炎性中耳炎,原発性中枢神経系血管炎,コーガン症候群,IgA血管炎,ぶどう膜炎,家族性地中海熱,クリオピリン関連周期性発熱症候群 ,組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)

 血液 :悪性リンパ腫,過粘稠度症候群(原発性マクログロブリン血症など),真性赤血球増加症,白血病

 内分泌 :低血糖,糖尿病性眼筋麻痺,低ナトリウム血症,先端巨大症,肥満細胞腫,甲状腺機能低下症,褐色細胞腫,副腎皮質機能低下症,リンパ球性下垂体炎

 耳鼻 :急性中耳炎,乳様突起炎,急性副鼻腔炎,茎状突起過長症(イーグル症候群)

 腎臓 :透析不均衡症候群,尿毒症

 産婦 :月経前症候群,妊娠高血圧症,HELLP症候群

 眼科 :急性緑内障発作,眼精疲労,紫外線角膜炎(雪眼),フォークト・小柳・原田病

 歯科 :う歯,顎関節症

 遺伝性疾患 :MELAS症候群(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群),皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性遺伝性脳動脈症遺伝性脳小血管病(CADASIL)

 環境要因: 熱中症,高山病,飛行機頭痛,睡眠時無呼吸症候群

 心因性 :統合失調症,うつ病,身体症状症

 その他 :発熱に伴う頭痛,てんかん発作後頭痛,後頭葉てんかん,慢性疲労症候群,脳脊髄圧減少症,眼窩上神経痛,一過性表在頭痛,腰椎穿刺後の頭痛,水頭症,良性頭蓋内圧亢進症,低酸素血症,可逆性脳梁膨大部病変, 脳アミロイドアンギオパチー関連炎症, 痙性斜頚による頭痛

アプローチ

 下記のステップに沿って診断を行う( 図表2 ).
 まずはレッドフラッグサインの有無を確認し,なければ特徴のある所見が随伴しているかを確認しながら診療を進める.

STEP0 別の症候・所見としてアプローチをした方が適切と思われる場合

 頭痛の訴えであっても,実際は顔面の痛みであれば顔面痛の,眼の痛みであれば眼痛としてのアプローチを検討する.

STEP1 レッドフラッグサイン陽性時の頭痛の評価

 頭痛を認める患者では,まずレッドフラッグサインを評価する.

 レッドフラッグサイン陽性の場合は,くも膜下出血・脳梗塞・巨細胞性動脈炎等の重篤な疾患を疑い評価を行う.

 発熱を認める患者では,項部硬直やjolt accentuationを評価し,陽性の場合は髄膜炎を疑って腰椎穿刺を行う( 図表3 ).

 注:jolt accentuation は最近の研究では感度・特異度ともに十分な精度ではないとの報告が出ており [Am J Emerg Med. 2014 Jan; 32(1):24-8] ,確実な髄膜炎の診断および除外には有用な所見ではないという考察がある. [Am J Emerg Med. 2013 Nov; 31(11):1601-4]

STEP2 特徴のある所見をもつ頭痛の評価

 頭痛の診療において,特徴性の高い所見を認める場合は,その特徴をもとに鑑別疾患を考慮する必要がある.

 例えば,「ピリピリあるいはビリッとする」「痛みの持続時間が数秒である」と患者が答えた場合は,神経痛を考慮し三叉神経痛,帯状疱疹,後頭神経痛などを鑑別に挙げる必要がある.

 「早朝に悪化する」と患者が答えた場合は,うつ病や低血糖等の疾患も考慮する( 図表4 ).

STEP3 日常診療でよくある頭痛の原因の評価

 緊急性の高い疾患と特徴性の高い疾患を除外された場合,多くの頭痛は片頭痛,緊張型頭痛などの頻度の高い疾患の診断となる.

 片頭痛の特徴は,主に片側で嘔気を伴う拍動性の頭痛で,頭痛のために日常生活の制限が必要になることである.

 緊張型頭痛の特徴は,締め付けられるような両側の頭痛で,頭痛のために日常生活の制限はない.

 その他,副鼻腔炎,後頭神経痛などの疾患も頻度が高いため鑑別疾患として考慮する( 図表5 ).

身体診察

 発熱を伴う頭痛では髄膜刺激徴候を確認する.
 帯状疱疹における水疱,緑内障発作における結膜充血など,視診が診断に寄与ことがあり,疑えば確認する.
 高齢者初発頭痛での側頭動脈の所見(視診圧痛,拍動の消失)も忘れない.

バイタルサイン

体温

対象 頭痛を訴える患者

血圧

対象 頭痛を訴える患者

脈拍

対象 頭痛を訴える患者

SpO 2

対象 頭痛を訴える患者

呼吸数

対象 頭痛を訴える患者

髄膜刺激徴候

ジョルト・サイン

対象 髄膜炎が疑われる患者

コメント ジョルト・サイン(jolt accentuation)が陰性であれば髄膜炎の可能性が下がる.

項部硬直

対象 髄膜炎が疑われる患者

コメント 陽性であれば髄膜炎の可能性を考慮する.

ブルジンスキー徴候

対象 髄膜炎が疑われる患者

コメント 感度が低く,特異度が高いとされる.

ケルニッヒ徴候

対象 髄膜炎が疑われる患者

コメント 感度が低く,特異度が高いとされる.

ネックフレクションテスト

対象 髄膜炎が疑われる患者

コメント ネックフレクションテスト(neck flextion test)は,頭部を前屈させると抵抗や疼痛を感じ,下顎が前胸部につかない場合に陽性判定する.

神経所見

上肢バレー徴候

対象 脳血管障害(錐体路障害があれば他の脳内疾患も疑われる)が疑われる患者

コメント 陽性であれば脳血管障害の可能性を主に考える.

下肢バレー徴候

対象 脳血管障害(錐体路障害があれば他の脳内疾患も疑われる)が疑われる患者

コメント 陽性であれば脳血管障害の可能性を主に考える.

脳神経麻痺

対象 主に脳血管障害(特に錐体路障害)が疑われる患者

コメント 特になし

指鼻試験,膝踵試験

対象 主に脳血管障害(特に小脳障害)が疑われる患者

コメント 片側性に拙劣であれば脳血管障害(特に小脳障害)の可能性を考える.

手回内回外試験

対象 主に脳血管障害(特に小脳障害)が疑われる患者

コメント 手回内回外試験(diadochokinesis)は片側性に拙劣であれば主に脳血管障害(特に小脳障害)の可能性を考慮する.

三叉神経・自律神経性頭痛を示唆する所見

流涙

対象 群発頭痛を含む,三叉神経自律神経性頭痛を疑う患者

コメント 特に頭痛と同側の片側性の流涙を伴えば群発頭痛を含む三叉神経自律神経性頭痛の可能性を考える.

ホルネル徴候

対象 群発頭痛を含む,三叉神経自律神経性頭痛を疑う患者

コメント 特に頭痛と同側の片側性のホルネル徴候を伴えば,群発頭痛を含む三叉神経自律神経性頭痛の可能性を考える.

その他

アロディニア

対象 帯状疱疹,難治性片頭痛を疑う患者

コメント 触れるだけで痛みや違和感が出現すれば陽性とする.

疼痛部位の皮疹

対象 帯状疱疹を疑う患者

コメント 皮疹があれば帯状疱疹の可能性を考慮する.

ハッチンソン徴候

対象 三叉神経第1枝領域の帯状疱疹を疑う患者

コメント 鼻背〜鼻尖部にかけて帯状疱疹を示唆する皮疹を認めれば,結膜炎や角膜炎など眼合併症の可能性があり眼科への紹介を検討する.

副鼻腔の叩打痛

対象 副鼻腔炎を疑う患者

コメント 副鼻腔の叩打痛陽性であれば副鼻腔炎の可能性を考える.

顔面の発赤

対象 丹毒/蜂窩織炎,帯状疱疹

コメント 紅斑を認めれば丹毒/帯状疱疹の可能性を,周囲に紅暈を伴う水疱を認めれば帯状疱疹を考える.

側頭動脈の圧痛

対象 巨細胞性動脈炎を疑う患者

コメント 側頭動脈に圧痛を認めれば巨細胞性動脈炎の可能性を考える.

側頭動脈の拍動消失

対象 巨細胞性動脈炎を疑う患者

コメント 側頭動脈の拍動が消失していれば巨細胞性動脈炎の可能性を考える.

後頭部の圧痛

対象 後頭神経痛を疑う患者

コメント 大後頭神経,小後頭神経に圧痛があれば後頭神経痛の可能性を考える.

頚部可動域制限

対象 頭痛を訴え,特に髄膜炎や頚椎偽痛風を疑う患者

コメント 可動域制限があれば髄膜炎や頚椎偽痛風の可能性を考慮する.

検査例

 典型的な一次性頭痛の場合には.検査は必要としない場合は多い.
 赤旗徴候が陽性の場合や.二次性頭痛を疑う場合は.検査を追加する.

血液検査

検査項目

対象とコメント

 ルーチン(血算,腎機能検査,肝機能検査,電解質検査)
 コメント:ルーチン
 CRP
 ESR
 対象:頭痛を認め,感染症による頭痛や自己免疫に伴う頭痛,または巨細胞性動脈炎を原因として疑う患者
 コメント:陽性であればさらなる精査を検討する
 血糖
 対象:頭痛に発汗や震えなどを伴い,低血糖による頭痛を疑う患者
 HbA c
 対象:頭痛に眼筋麻痺や糖尿病を疑う既往を認め,糖尿病性眼筋麻痺に伴う頭痛を疑う患者
 CK
 心筋トロポニンT〔ECLIA〕
 対象:頭痛を認め,心筋梗塞に基づく心臓性頭痛を疑う患者
 TSH
 FT3
 FT4
 対象:頭痛に甲状腺腫大や倦怠感などを認め,甲状腺機能低下症に伴う頭痛を疑う患者
 蛋白分画〔キャピラリー電気泳動法〕
 免疫電気泳動(抗ヒト全血清による同定)〔免疫電気泳動法〕
 対象:頭痛とヘモグロビンの低下や総蛋白・IgMの増加を認め,過粘稠度症候群(原発性マクログロブリン血症など)を疑う患者
 IGRA
 対象:頭痛と髄膜炎症状を認め,結核性髄膜炎を疑う患者.また,二次性頭痛の原因として結核を考える場合.
 エリスロポエチン
 対象:頭痛と多血や掻痒感などを認め,真性赤血球増加症を疑う患者
 IGF-1〔ECLIA〕
 対象:頭痛に加え鼻や口唇の肥大,下顎の突出,手足の容積の増大,巨大舌などを認め,先端巨大症を疑う患者
 可溶性IL-2レセプター
 対象:頭痛にLDH上昇やリンパ節腫大を認め,悪性リンパ腫を原因として疑う患者
 ACE
 対象:頭痛にリンパ節腫大や眼症状(霧視,ぶどう膜炎など)を認め,サルコイドーシスを疑う患者
 血清アミロイドA蛋白〔ラテックス凝集免疫法〕
 対象:頭痛と髄膜炎症状を認め,家族性地中海熱を疑う患者
 抗核抗体
 CH50〔Mayer法相対比濁法〕
 対象:頭痛に皮疹や関節痛などを認め,全身性エリテマトーデスなど膠原病を疑う患者
 抗RNP抗体〔CLEIA〕
 対象:NSAIDs内服後に髄膜刺激徴候を伴う頭痛を認め,原因として全身性エリテマトーデス,混合性結合組織病などを疑う患者
 抗ds-DNAIgG抗体〔ELISA〕
 抗Sm抗体〔CLEIA〕
 対象:頭痛に皮疹や関節痛を認め,原因として全身性エリテマトーデスを疑う患者.また,NSAIDs内服後に髄膜刺激徴候を伴う頭痛を認め,原因として全身性エリテマトーデスなどを疑う患者
 抗Scl-70抗体〔CLEIA〕
 抗セントロメア抗体〔ELISA〕
 抗RNAポリメラーゼⅢ抗体〔ELISA〕
 対象:頭痛と高血圧等を認め,全身性強皮症の既往があり強皮症腎クリーゼを疑う患者
 PR3-ANCA
 MPO-ANCA
 対象:頭痛に腎障害や肺病変を認め,ANCA関連血管炎等を疑う患者.また,頭痛に難聴など耳症状を伴い,ANCA関連血管炎性中耳炎を原因として疑う患者
 抗MOG抗体
 対象:頭痛のある多発性硬化症や視神経脊髄炎を疑う患者でAQP4など陰性の患者
 抗NMDAR抗体
 対象:頭痛に発熱,不随意運動や精神神経症状,髄膜刺激症状を伴い,頭痛の原因として抗NMDA受容体脳炎を疑う患者
 遺伝子検査
 対象:頭痛のを認め,頭痛の原因として真性赤血球増加症やベーチェット病,強直性脊椎炎,神経スイート病を疑う患者
 詳細:
 多血などがあり真性多血症を疑う場合は 遺伝子関連検査:JAK2V617F遺伝子変異解析〔RT-PCR〕 を行う.
 皮疹や関節痛などがあり,ベーチェット病,強直性脊椎炎,神経スイート病を疑う場合は 遺伝子関連検査:HLA-A,B(血清対応型タイピング)〔PCR-rSSO法〕 を行う.
 繰り返す発熱や髄膜刺激徴候などがあり家族性地中海熱を疑う場合はMEFV遺伝子の解析を,クリオピリン関連周期熱症候群を疑う場合はNLRP3遺伝子検査を行う.
 梅毒定性RPR〔ラテックス比濁法〕
 梅毒定性TP抗体〔ラテックス比濁法〕
 対象:頭痛を認め性感染症の既往がある/リスクがあり,頭痛の原因として神経梅毒を疑う患者
 HIV抗原・抗体
 対象:頭痛を認め性感染症の既往がある/リスクがあり,急性HIV感染症候群や後天性免疫不全症候群を疑う患者
 ヒトパルボウイルスB19IgM〔EIA〕
 対象:頭痛を認め四肢にレース様皮疹を伴い,パルボウイルス感染症を疑う患者
 コメント:妊娠可能な女性にしか保険は適応されていない
 ウイルスPCR検査
 対象:頭痛の原因としてウイルス感染症に伴う症候性の頭痛を疑う患者
 詳細:
 発熱や虫刺症歴,渡航歴等がありデング熱を疑う場合はデングウイルスRT-PCRを行う.
 発熱や皮疹,ダニ咬傷歴があり重症熱性血小板減少症候群を疑う場合はSFTSV遺伝子検査(RT-PCR法)を行う.
 意識変容など脳炎様の症状があり,日本脳炎を疑う場合は日本脳炎ウイルスRNA定性検査を行う.
 ウイルス抗原・抗体検査
 対象:頭痛の原因としてデング熱や日本脳炎などのウイルス感染症に伴う頭痛を疑う患者
 詳細:
 発熱や虫刺症歴,渡航歴等があり,デング熱を疑う場合は デングウイルスNS1抗原〔ELISA〕 を行う.
 意識変容など脳炎様の症状があり,日本脳炎を疑う場合は日本脳炎特異的IgM抗体または 日本脳炎ウイルス〔CF〕 を行う.
 細菌抗原・抗体検査
 対象:頭痛の原因として以下の細菌感染症に伴う症候性の頭痛を疑う患者
 詳細:
 皮疹やダニ咬傷を認め,ツツガムシ病を疑う場合は以下を行う.

 ツツガムシカープIgG〔FA〕

 ツツガムシカープIgM〔FA〕

 ツツガムシカトーIgG〔FA〕

 ツツガムシカトーIgM〔FA〕

 ツツガムシギリアムIgG〔FA〕

 猫や家畜の接触歴があり,原因のはっきりない発熱や筋肉痛などを伴い,原因としてQ熱を疑う場合にはQ熱抗体検査を行う.
 動物接触歴や加熱不十分な肉・乳・乳製品の摂取歴があり,原因としてブルセラ症を疑う場合は ブルセラ凝集反応〔細菌凝集反応〕 を行う.
 鳥飼育歴や比較的徐脈を伴い,原因としてオウム病を疑う場合は オウム病クラミドフィラ〔CF〕 を行う.
 寄生虫抗体検査
 対象:頭痛を認め,病歴や検査での好酸球上昇から寄生虫感染症を疑う患者
 詳細:
 流行地への渡航歴,ナメクジやヘビなどの生食歴などがあり,広東住血線虫症を疑う場合,広東住血吸虫抗体検査を行う.
 クマやイノシシなどの生食歴後に発熱や筋肉痛などがあり,旋毛虫症による症候性の頭痛を疑う場合旋毛虫症抗体検査を行う.
 豚肉の生食歴に消化器症状などがあり,有鉤のう虫症による頭痛を疑う場合,有鉤条虫抗体検査を行う.
 トキソプラズマIgG抗体〔ELISA〕
 トキソプラズマIgM抗体〔ELISA〕
 トキソプラズマPCR
 対象:頭痛を認め,背景に免疫抑制剤の使用など免疫不全を示唆する病歴があり,頭痛の原因としてトキソプラズマ脳炎を疑う患者
 細菌PCR検査
 対象:頭痛の原因として以下の細菌感染症に伴う症候性の頭痛を疑う患者
 コメント:
 ダニ咬傷歴や紅斑,肝障害などを認め,ツツガムシ病を疑う場合はツツガムシ病PCR検査を行う.
 ダニ咬傷歴や環状紅斑などを認め,ライム病を疑う場合ライム病抗体検査を行う.
 猫や家畜への接触歴があり,原因のはっきりない発熱や筋肉痛などを伴い,原因としてQ熱を疑う場合にはQ熱PCR検査を行う.
 動物接触歴や加熱不十分な肉・乳・乳製品の摂取歴があり,原因としてブルセラ症を疑う場合はブルセラ症PCRを行う.
 血液ガス
 対象:頭痛を認め,病歴からメチルアルコール中毒や一酸化炭素中毒を疑う患者
 薬物濃度測定
 対象:頭痛を認め,病歴から薬物に伴う頭痛を疑う患者
 詳細:
 ヒ素中毒を疑う場合は血中ヒ素濃度,尿中ヒ素濃度を測定する.
 トルエン中毒を疑う場合は尿中馬尿酸濃度を測定する.
 鉛中毒を疑う場合は 鉛 の測定を行う.
 アンフェタミン中毒を疑う場合は尿中薬物簡易スクリーニングキットを行う.

髄液検査

検査項目

対象とコメント

 髄液圧
 対象:頭痛を認め,髄膜炎を疑う患者
 髄液細胞数
 対象:頭痛を認め,髄膜炎を疑う患者
 髄液糖
 対象:頭痛を認め,髄膜炎を疑う患者
 コメント:同時に血糖値も測定すること
 髄液乳酸
 対象:頭痛に脳卒中様の症状やけいれん,糖尿病の既往歴などを認め,MELAS症候群を疑う患者
 髄液TP
 対象:頭痛を認め,髄膜炎を疑う患者
 髄液キサントクロミー
 対象:頭痛を認め,くも膜下出血を疑う患者
 コメント:CT陰性でも,強くくも膜下出血を疑う患者に考慮する
 髄液グラム染色
 対象:頭痛を認め,細菌性髄膜炎を疑う患者
 髄液HSV-PCR
 対象:頭痛を認め,ヘルペス脳炎を疑う患者
 コメント:感度が非常に高い
 髄液抗原検査
 対象:頭痛の原因として髄膜炎を疑い,起炎菌の同定を検討する患者
 詳細:
 幅広い起炎菌の検索を期待する場合は髄液multiplex real-time PCRまたは髄液のラテックス凝集法による細菌抗原検査を行う.
 特に肺炎球菌を起炎菌として考慮する場合は髄液のイムノクロマトグラム法による肺炎球菌抗原検査を行う.
 特にクリプトコッカス性髄膜炎を疑う場合はクリプトコッカス抗原検査を提出する.
 髄液梅毒非トレポネーマ試験(脂質抗原法(VDRL,RPR))
 髄液トレポネーマ試験(TP抗体法(FTA-ABS,TPHA))
 対象:頭痛を認め性感染症の既往がある/リスクがあり,頭痛の原因として神経梅毒を疑う患者
 髄液日本脳炎ウイルスRNA定性〔RT-PCR〕
 対象:頭痛を認め,日本脳炎を疑う患者
 コメント:感度は高くない

培養検査

検査項目

対象とコメント

 静脈血培養
 動脈血培養
 対象:頭痛を認め,脳膿瘍,髄膜炎を疑う患者
 コメント:細菌性髄膜炎における感度は70%程度とされる
 髄液培養
 対象:頭痛を認め,髄膜炎を疑う患者
 髄液抗酸菌分離培養(液体法)
 髄液抗酸菌分離培養(小川法)
 対象:頭痛に髄膜刺激徴候を認め,結核性髄膜炎を疑う患者

生理・画像検査

検査項目

対象とコメント

 心電図
 対象:頭痛を認め,急性心筋梗塞による心臓性頭痛を疑う患者
 胸部X線〔正面,側面〕
 対象:頭痛を認め,肺炎による頭痛を疑う患者
 副鼻腔X線〔ウォーターズ,コールドウェル〕
 対象:頭痛を認め,副鼻腔炎による頭痛を疑う患者
 頚動脈超音波
 対象:頭痛を認め,内頚動脈解離を疑う患者.または脳梗塞の診断に至った患者
 心臓超音波
 対象:頭痛を認め,心筋梗塞による心臓性頭痛や慢性心不全,感染性心内膜炎を疑う患者
 眼科検査
 対象:頭痛を認め,眼科疾患による頭痛を疑う患者
 詳細:
 頭痛に視力低下を伴い,視神経炎を疑う場合

 検眼鏡

 頭痛に赤目や嘔気を伴い,急性緑内障発作を疑った場合

 眼圧測定

 隅角鏡検

 細隙灯顕微鏡検査査

 頭痛を認め紫外線暴露歴があり,紫外線角膜炎による頭痛を疑う場合

 細隙灯顕微鏡検査

 フルオレスセイン染色検査

 頭痛を認めぶどう膜炎やめまいがあり,フォークト・小柳・原田病による頭痛を疑う場合

 光干渉断層計検査

 副鼻腔CT
 対象:頭痛に鼻閉や鼻汁を認め,頭痛の原因として副鼻腔炎を疑う患者
 頭部CT
 対象:頭痛を認め,赤旗徴候陽性を認める場合.特にくも膜下出血等の頭蓋内疾患を疑う患者
 頭部CT〔造影〕
 対象:頭痛を認め,脳腫瘍を疑う患者.また,頭痛に発熱や脳神経障害を伴い肥厚性硬膜炎を疑う患者
 頭部MRI
 対象:頭痛を認め,神経学的検査で異常所見がある患者または,病歴上頭蓋内疾患を疑う患者
 コメント:T2あるいはFLAIR像を撮影できる場合は,MRIを最初撮影しても良い.
 撮像方法:
 コーガン症候群を疑い内耳病変を評価したい場合

 脂肪抑制造影T1強調MRI

 STIR

 脂肪抑制T2強調MRI

 頭部MRI〔造影〕
 対象:頭痛を認め,脳腫瘍を疑う患者.また,頭痛に発熱や脳神経障害を伴い肥厚性硬膜炎を疑う患者
 頭部MRA
 対象:頭痛を認め,脳血管の異常を疑う患者(脳動脈瘤,動静脈奇形,動脈解離,もやもや病,脳血管狭窄
 頭部MR venography
 対象:頭痛に頭蓋内圧亢進症状を認め,脳静脈洞血栓症を疑う患者
 3DCT血管造影
 対象:頭痛を認め,脳血管の異常の可能性が高くMRAやCTAで代用できない場合,あるいは診断に治療手技も兼ねる場合
 頚椎X線〔正面,側面〕
 対象:頭痛を認め,頚性頭痛を疑う患者
 頚部CT
 対象:高齢者で頭痛を認め,頚椎偽痛風を疑う患者
 頚部MRI
 対象:頭痛を認め,頚椎症,脊髄空洞症,キアリ奇形を疑う患者
 眼窩造影MRI
 対象:頭痛に視力障害や視野障害を認め,視神経炎を疑う患者
 詳細:
 特に視神経炎を評価する場合

 眼窩部冠状断脂肪抑制ガドリニウム造影MRI

 脳波
 対象:頭痛を認め,急性頭痛の原因としててんかん性異常,脳炎を疑う患者
 ポリソムノグラフィー
 対象:頭痛を認め,睡眠時無呼吸症を疑う患者
 骨シンチグラフィ
 対象:頭痛を認め,骨パジェット病を疑う患者
 FDG-PET
 対象:頭痛を認め,高安動脈炎,巨細胞性動脈炎を疑う患者

病理検査

検査項目

対象とコメント

 髄液細胞診
 対象:頭痛を認め,髄膜癌腫症,モラレ髄膜炎を疑う患者
 コメント:悪性細胞を検出する感度は低く,疑えば繰り返し施行する.
 モラレ髄膜炎ではモラレ細胞の有無を確認する.
 喀痰細胞診
 対象:頭痛を認め,ウェステルマン肺吸虫症を疑う患者
 血液塗抹ギムザ染色
 対象:頭痛を認め渡航歴や発熱があり,マラリアを疑う患者
 コメント:感度が低いため,通常12~24時間ごとに3回連続の陰性確認が必要
 側頭動脈生検
 対象:頭痛を認め,巨細胞性動脈炎を疑う患者
 皮膚生検
 対象:頭痛を認め,結節性多発動脈炎,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,IgA血管炎を疑う患者
 その他生検
 対象:頭痛を認め,以下の疾患を評価する場合に検討する.
 詳細:
 頭痛に血球異常や蛋白異常を認め,真性赤血球増加症や白血病,血球貪食症候群,原発性マクログロブリン血症を疑う場合

 骨髄穿刺

 材料:骨髄生検

 頭痛を認め頭部画像検査で腫瘤影や炎症所見を認め,原発性中枢神経系血管炎,真菌性髄膜炎や有鉤のう虫症,脳アミロイドアンギオパチー関連炎症を疑う場合

 脳生検

 頭痛を認め末梢血ALP上昇やレントゲンで骨パジェット病を疑う所見がある場合

 骨生検

 頭痛に発熱や難聴を認め,再発性多発軟骨炎を疑う場合

 軟骨生検

症状治療例

 二次性頭痛の場合には,その原因に応じた治療を行う.
 一次性頭痛では,緊張型頭痛に対しては鎮痛薬〔 アセトアミノフェン(カロナール )など〕や 筋弛緩薬 〔 エペリゾン ミオナール )など〕を,片頭痛に対しては鎮痛薬または トリプタン製剤 〔 スマトリプタン イミグラン )など〕の投与を検討する.
 鎮痛薬は薬物乱用頭痛にならないように留意する.
 急性の群発頭痛と考えられる頭痛を認めた場合は,酸素投与も効果があり, スマトリプタン イミグラン )を点鼻または皮下投与する.

 処方例 痛み止めとして1)または2)を,緊張型頭痛を疑う場合は3)を投与する.片頭痛様で吐き気を伴う場合,内服可能であれば4)を,内服困難であれば5)を投与する.片頭痛を疑えば6)~11のいずれか一つの投与を検討する.群発頭痛であれば12)の吸入を検討する.

鎮痛薬

1) カロナール[200mg]【用法(筆者)】1回2錠 頭痛時頓用,または1回2錠1日3回/2018年1月【対象】頭痛を認める患者【添付文書用法参照病名】頭痛

〔参考:添付文書情報: カロナール(錠)[200mg錠][300mg錠][500mg錠] 【効能効果1】頭痛【用法(添付文書)】《成人》1回300~1000mg服用し,投与間隔は4~6時間以上とする.〕

2) ロキソニン錠[60mg]【用法(筆者)】1回1錠 頭痛時頓用,または1回1錠1日3回/2018年1月【対象】頭痛を認める患者【添付文書用法参照病名】頚肩腕症候群【コメント】薬物乱用頭痛に注意

〔参考:添付文書情報: ロキソニン(錠)[60mg錠] 【効能効果1】変形性関節症【用法(添付文書)】《成人》1回60mg,1日3回服用.頓用の場合は,1回60~120mg服用.〕

筋弛緩薬

3) ミオナール[50mg]【用法(筆者)】1回1錠1日3回/2018年1月【対象】緊張型頭痛を疑う患者【添付文書用法参照病名】頚肩腕症候群【コメント】保険適用外.眠気に注意

〔参考:添付文書情報: ミオナール(錠)[50mg錠] 【効能効果1】頚肩腕症候群【用法(添付文書)】《錠50mg》《成人》1日量3錠(150mg),1日3回食後に分割投与.〕

制吐薬

4) ナウゼリン[10mg]【用法(筆者)】1回1錠 吐き気時頓用/2018年1月【対象】特に片頭痛で,吐気を伴う患者【添付文書用法参照病名】慢性胃炎【コメント】鎮痛薬との併用する場合もある.

〔参考:添付文書情報: ナウゼリン(錠)[5mg錠][10mg錠] 【効能効果1】慢性胃炎【用法(添付文書)】《成人》1回10mg,1日3回食前服用.〕

5) プリンペラン注射液[10mg 0. 5%2mL]【用法(筆者)】点滴(生理食塩水に溶いて30分で滴下)【対象】特に片頭痛で,吐気を伴うが内服困難な患者【添付文書用法参照病名】胃炎【コメント】特になし

〔参考:添付文書情報: プリンペラン(注)[0. 5%2mL] 【効能効果1】胃炎【用法(添付文書)】《成人》1回10mg(注射液1管)を1日1~2回筋肉内・静注.〕

片頭痛治療薬

6) イミグラン[50mg]【用法(筆者)】通常,成人にはスマトリプタンとして1回50mgを片頭痛の頭痛発現時に経口投与する.なお,効果が不十分な場合には,追加投与をすることができるが,2時間以上あけること.50mgで効果が不十分であった場合には,次回片頭痛発現時から100mgを経口投与可.ただし,1日の総投与量を200mg以内とする.【対象】片頭痛を疑う患者【添付文書用法参照病名】片頭痛【コメント】虚血性心疾患の疑いのある患者には使用を控えること

〔参考:添付文書情報: イミグラン(錠)[50mg錠] 【効能効果1】片頭痛【用法(添付文書)】《成人》1回50mgを頭痛発現時服用.効果不十分な場合は前回の投与から2時間以上あけること.50mgの服用で効果が不十分であった場合次回から100mg服用可.〕

7) イミグラン皮下注キット[3mg]【用法(筆者)】片頭痛および群発頭痛発作の頭痛発現時に1回3mgを皮下投与する.1回3mg,1日6mgを超えないこと.2018年2月【対象】片頭痛,群発頭痛の患者で,内服困難な場合【添付文書用法参照病名】片頭痛,群発頭痛【コメント】虚血性心疾患の疑いのある患者には使用を控えること

〔参考:添付文書情報: イミグラン(注)[3mg] 【効能効果1】片頭痛【用法(添付文書)】《成人》頭痛発現時1回3mg皮下投与.初回投与で軽減した場合24時間以内の発作に追加投与可だが,少なくとも1時間の間隔をおくこと.〕

8) マクサルト[10mg]【用法(筆者)】1回10mgを頭痛発現時に投与【対象】片頭痛を疑う患者【添付文書用法参照病名】片頭痛【コメント】口腔内崩壊錠で水が無くても内服可能

〔参考:添付文書情報: マクサルト(錠)(RPD錠)[10mg錠] 【効能効果1】片頭痛【用法(添付文書)】1回10mgを頭痛発現時服用.効果不十分な場合,追加投与可だが,2時間以上あけること.1日総投与量20mg以内.〕

9) ゾーミッグ(錠)[2. 5mg錠]【用法】下記【用法(添付文書)】参照【対象】片頭痛の患者【添付文書用法参照病名】片頭痛

〔参考:添付文書情報: ゾーミッグ(錠)[2. 5mg錠] 【効能効果1】片頭痛【用法(添付文書)】1回2.5mgを片頭痛の頭痛発現時服用.効果が不十分な場合には,追加投与をすることができるが,前回の投与から2時間以上あけること.2.5mgの服用で効果が不十分であった場合には,次回片頭痛発現時から5mg服用可.1日の総投与量を10mg以内こと.〕

10) レルパックス(錠)[20mg錠]【用法】下記【用法(添付文書)】参照【対象】片頭痛の患者【添付文書用法参照病名】片頭痛

〔参考:添付文書情報: レルパックス(錠)[20mg錠] 【効能効果1】片頭痛【用法(添付文書)】1回20mgを片頭痛の頭痛発現時服用.効果が不十分な場合には,追加投与をすることができるが,前回の投与から2時間以上あけること.また20mgの服用で効果が不十分であった場合には,次回片頭痛発現時から40mg服用可.1日の総投与量を40mg以内.〕

11) アマージ(錠)[2. 5mg錠]【用法】下記【用法(添付文書)】参照【対象】片頭痛の患者【添付文書用法参照病名】片頭痛

〔参考:添付文書情報: アマージ(錠)[2. 5mg錠] 【効能効果1】片頭痛【用法(添付文書)】《成人》1回2.5mgを片頭痛の頭痛発現時服用.効果が不十分な場合には,追加投与可だが,前回の投与から4時間以上あけること.1日の総投与量を5mg以内.〕

処置例

12) 酸素投与【方法】100%酸素を12L/minで15分投与/なし【対象】群発頭痛の患者【添付文書用法参照病名】特になし【コメント】20~30分で効果が出る.

診療に適した医療機関

 初期評価 :急性期で重症感がある/レッドフラッグサイン陽性の頭痛である場合はCT/MRIへのアクセスが良く,脳神経内科/脳外科専門医のいる医療機関
 評価後紹介 :難治性/診断不明の頭痛である場合は,頭痛外来のある医療機関

患者・家族説明のポイント

 帯状疱疹を鑑別として考えるも皮疹が明らかではない場合,皮疹は疼痛に遅れて出現することがあるため,帰宅時には疼痛部位に皮疹が出現しないか確認しておくことを伝える.
 頭部外傷のうち,急性硬膜外血腫は意識清明期(lucid interval)後に意識障害を発症することがあるため,帰宅させる場合には慎重に経過観察し,様子がおかしければ速やかに医療機関を受診するように指示をする.
 頭部外傷後,特に高齢者では外傷後数ヶ月以内に認知症様症状や歩行障害,尿失禁など出現すれば慢性硬膜下血腫等の可能性があるため,特に脳神経外科のある医療機関へ受診するように伝える.
 頭痛に対して痛み止めを処方する場合,痛み止めを多用(1ヶ月に10日以上を3ヶ月連続が目安)すると薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)になる可能性があるため,痛み止めを使用する頻度が増えるようであれば頭痛外来をメインとした.

診療に役立つエビデンス

髄液穿刺前のCT

 一般にはCTを先に撮るのが常識である.
 文献的には髄液穿刺前にCT撮像は,1:免疫不全状態,2:中枢神経系の病気の既往,3:新たに発症したけいれん,4:うっ血乳頭を認める,5:意識状態の変化,6:神経脱落症状を認める場合に考慮する. [Clin Infect Dis. 2004 Nov 1; 39(9):1267-84]

くも膜下出血の精査をいつ行うか?(Ottawa SAH Rules)

 救急外来において,1:40歳以上,2:頚部痛か項部硬直,3:意識消失の目撃,4:労作時に発症,5:ただちに最大となる電撃様頭痛,6:顎をむねにつけるや臥位で8cm以上頭をあげることができない場合のいずれか1つを認めたらくも膜下出血を疑って精査を検討する. [JAMA. 2013 Sep 25; 310(12):1248-55]

関連するガイドライン/レビュー文献

 [国際頭痛分類第二版] (ガイドライン)

問診

 レッドフラッグサインを示唆する問診(突発,増悪,最悪など)は確認する.
 頭痛の頻度,性状,持続時間も鑑別のために有用である.
 片頭痛を疑えば,その特徴である光・音・臭いなどに対する過敏症状,嘔気,ADL障害の程度を確認する.

本診項目

 下記のような事項で患者さん自身の表現が実際と食い違うことが多いため,問診票の結果を参考にしつつ,実際の診療の際にはこれらを注意して確認することが重要となる.

本当にレッドフラッグサインは認めないか?

 重篤な疾患を示唆する所見を認めないか再度確認する.特に,“突発,増悪,最悪”の痛みでないことを確認する.

本当に突然発症かどうか?

 多くの患者さんにとっては,突然発症かどうかの判断は難しく,実際には突然ではなくても突然の発症だったと訴えることがある.

意識障害があったか?

 周囲の人にも,本人に意識障害がなかったかなどを確認する.

外傷歴があったか?

 転倒のエピソードなどは,質問して初めて明らかになることも多い.また,急性の外傷後の患者ではlucid インターバルを認めるかなどを確認する.

認知症・うつ症状・尿失禁を認めないか?

 認知症やうつ病の患者では本人が自覚症状を認めないことも多い.また尿失禁などは質問して初めて明らかになることも多い.これらの事項は積極的に確認を行う.

シナリオごとの評価

1-1 突然発症の頭痛

主な鑑別疾患

 くも膜下出血 (最悪の頭痛,くも膜下出血の家族歴,意識障害)

次の一手  頭部CT,頭部MRI,画像検査で陰性でも疑えば腰椎穿刺でキサントクロミーの確認 →  脳神経外科コンサルト

 椎骨動脈解離 (頭部の後屈や回旋,神経症状)

次の一手  頭部MRI,頭部MRA →  脳神経内科,脳神経外科コンサルト

 脳出血 (急性発症,高血圧の既往,神経脱落症状)

次の一手  頭部CT,脳神経内科/脳神経外科コンサルト

 脳梗塞 (急性発症,神経脱落症状,動脈硬化のリスク)

次の一手  頭部CT/MRI,脳神経内科コンサルト

 片頭痛 (光/音過敏あり,ADL障害あり,嘔気など消化器症状)

次の一手  他疾患の除外 →  NSAIDs投与.無効ならトリプタン製剤を検討

その他の鑑別疾患

 下垂体卒中,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS),一次性咳嗽性頭痛,一次性雷鳴頭痛,一次性運動時頭痛,寒冷刺激による頭痛,入浴時頭痛,一次性穿刺様頭痛

ポイント

 突然発症の頭痛では常にくも膜下出血や頭蓋内血管の破綻(脳出血や脳梗塞,椎骨動脈瘤など)を念頭に,頭部CTや頭部MRI,頭部MRA)などの画像検査を検討する.

解説

 突然発症の頭痛では,頭蓋内血管の破綻の可能性を考慮する.

 突然発症の場合,常に くも膜下出血 の可能性を考慮する.特に くも膜下出血の家族歴 がある場合は有病率が上昇する.

 糖尿病や脂質異常症,高血圧症など 動脈硬化のリスク がある場合は 脳梗塞 や 脳出血 の可能性を考慮する.

 後頚部の痛み で,特に頚部運動後の頭痛であれば 椎骨動脈解離 の可能性を考慮する.

 頭蓋内血管病変以外では, 片頭痛 も突然発症することが知られているが,上記脳血管障害を除外してから考慮する.

→  追加検査例

 髄液検査,頭部CT,頭部MRI,頭部MRA

1-2 発熱・炎症を伴う頭痛

主な鑑別疾患

 ウイルス性/細菌性髄膜炎 (最悪の頭痛,増悪傾向,髄膜刺激徴候陽性)

次の一手  頭部CT,髄液検査 →  抗菌薬・抗ウイルス薬の投与

 急性副鼻腔炎 (先行する感冒症状,鼻閉,鼻汁)

次の一手  副鼻腔CT →  痛み止め,中等症~重症では抗菌薬

 丹毒/蜂窩織炎 (発熱,頭痛,顔面の発赤・熱感・腫脹)

次の一手  血液培養,抗菌薬投与

 発熱に伴う頭痛 (感冒/肺炎など他に発熱の原因あり,髄膜刺激徴候陰性)

次の一手  髄膜炎を除外,原疾患に応じた治療

 巨細胞性動脈炎 (60歳以上の場合)(顎跛行,側頭動脈の圧痛・拍動消失)

次の一手  CRP,ESR,側頭動脈生検(生検前にFDG-PET検査も考慮) →  ステロイド薬

 頚椎偽痛風 (高齢者,発熱/炎症反応上昇,頚部可動域制限)

次の一手  頚椎X線,頚椎CT,NSAIDs投与

その他の鑑別疾患

 ウイルス性脳炎,結核性髄膜炎,真菌性髄膜炎,脳膿瘍,硬膜外膿瘍,感染性心内膜炎,肺炎に伴う頭痛(レジオネラ肺炎,マイコプラズマ肺炎など),日本脳炎,ツツガムシ病,ライム病,Q熱,ブルセラ症,オウム病,脳室シャント感染,マラリア,くも膜下出血,モラレ髄膜炎,肥厚性硬膜炎

ポイント

 発熱を伴う頭痛では髄膜炎の可能性を考慮し,髄膜刺激徴候を確認のうえ必要に応じて髄液検査を行う.

解説

 発熱を伴う頭痛では,1:頭蓋内の感染症,2:頭頚部の頭蓋外の感染症,3:頭頚部外の感染症を含む炎症性疾患の可能性を考慮しながら診察を進める.

 1:頭蓋内の感染症として 髄膜炎 の可能性は常に考慮し,必要に応じて以下の 髄膜刺激徴候 の有無を確認する.

 Jolt accentuation

 項部硬直

 ブルジンスキー徴候

 ケルニッヒ徴候

 ネックフレクションテスト

 2:頭頚部の感染症として, 副鼻腔炎 や 丹毒 蜂窩織炎 を考える.

 副鼻腔炎では 鼻閉 , 鼻汁 や 副鼻腔の叩打痛 を確認する.

 丹毒/蜂窩織炎では 頭頚部の発赤 や 熱感 , 腫脹 などを確認する.

 3:頭頚部外の炎症性疾患として 発熱に伴う頭痛 や 巨細胞性動脈炎 , 頚椎偽痛風 を考慮する.

 頻度としては感染症の部分症状としての 発熱に伴う頭痛 が多い.

 感染症などによる発熱に伴う頭痛が否定的で,特に 高齢者 であれば 巨細胞性動脈炎 や 頚椎偽痛風 を考慮する.

 巨細胞性動脈炎の評価のために, 側頭動脈の圧痛 や 側頭動脈拍動の消失 の有無を確認する.

 巨細胞性動脈炎の重篤な合併症として視力低下/失明が知られているため,疑えば速やかな精査および治療介入が必要である.

 頚椎偽痛風の評価のために 頚部可動域制限 の有無を確認する.

→  追加検査例

 採決検査(CRP,ESR),血液培養,髄液検査,髄液培養,髄液HSV-DNA定性,胸部X線,副鼻腔X線,副鼻腔CT,側頭動脈生検

1-3 悪化傾向の頭痛

主な鑑別疾患

 ウイルス性/細菌性髄膜炎 (最悪の頭痛,増悪傾向,髄膜刺激徴候陽性)

次の一手  頭部CT,髄液検査 →  抗菌薬・抗ウイルス薬の投与

 脳膿瘍 (発熱・炎症反応上昇,増悪傾向,神経脱落症状)

次の一手  頭部CT,頭部MRI →  神経内科・脳神経外科コンサルト

 脳腫瘍 (増悪,吐気,神経症状)

次の一手  頭部CT,頭部MRI →  脳神経外科コンサルト

 髄膜癌腫症 (悪性腫瘍の既往,増悪傾向,吐気・嘔吐など消化器症状)

次の一手  頭部CT,頭部MRI,髄液検査,髄液細胞診 →  原発巣の診療科へコンサルト

その他の鑑別疾患

 ウイルス性脳炎,真菌性髄膜炎,結核性髄膜炎,硬膜下膿瘍,脳膿瘍,脳膿瘍,結核性髄膜炎,下垂体卒中,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS),片頭痛

ポイント

 増悪傾向の頭痛では感染症や腫瘍による二次性の頭痛を考慮し,頭部CT, 頭部MRIなど検討する.

解説

 悪化傾向の頭痛では,1: 頭蓋内感染症(髄膜炎など)や2: 頭蓋内腫瘍性病変(脳腫瘍など)可能性を考慮する.

 1:頭蓋内感染症では 髄膜炎 や 脳膿瘍 を考慮し ,発熱 の有無や 髄膜刺激徴候 として以下を確認する.

 Jolt accentuation

 項部硬直

 ブルジンスキー徴候

 ケルニッヒ徴候

 ネックフレクションテスト

 2:頭蓋内腫瘍性病変では 脳腫瘍 や 髄膜癌腫症 を考慮する.

 脳腫瘍に伴う頭痛は 朝方に増悪 することがあり,必要に応じて頭部CTや頭部MRIを考慮する.

 髄膜癌腫症は画像で異常所見がはっきりしないことがある.疑えば 髄液細胞診 で悪性腫瘍の有無を確認する.その感度は低いため,必要に応じて繰り返し髄液細胞診を考慮する.

→  追加検査例

 血液培養,髄液培養,髄液検査,髄液細胞診,頭部CT,頭部MRI,頭部MRA

1-4 高齢者の初発頭痛

主な鑑別疾患

 巨細胞性動脈炎 (60歳以上の場合)(顎跛行,側頭動脈の怒張・圧痛・拍動消失)

次の一手  CRP,ESR,側頭動脈生検, FDG-PET(生検前にも考慮) →  ステロイド薬

 脳出血 (急性,神経症状,高血圧の既往)

次の一手  頭部CT →  神経内科コンサルト

 脳梗塞 (急性,神経症状,動脈硬化のリスク)

次の一手  頭部CT,頭部MRI →  神経内科コンサルト

 後頭神経痛 (後頭部痛,神経痛様,トリガーポイントの確認)

次の一手  NSAIDs,筋弛緩薬,効果乏しければトリガーポイント注射

 帯状疱疹 (神経痛様の痛み,アロディニア,疼痛部位に一致した皮疹)

次の一手  抗ウイルス薬投与,皮膚科コンサルト

その他の鑑別疾患

 ウイルス性/細菌性髄膜炎,脳膿瘍,丹毒,蜂窩織炎,感染性心内膜炎,肺炎に伴う頭痛(レジオネラ肺炎,マイコプラズマ肺炎など),ツツガムシ病,トキソプラズマ脳膿瘍,高血圧性脳症,髄膜癌腫症,脳腫瘍,転移性脳腫瘍,頚椎偽痛風

ポイント

 高齢者の初発頭痛では,まずは脳血管障害など二次性頭痛から可能性を考慮する.

解説

 高齢者で初発の頭痛では,1:血管炎,2:脳血管障害,3:表在神経の障害など二次性頭痛を念頭に鑑別をすすめる.

 1:血管炎として 巨細胞性動脈炎 を考慮し, 発熱 や 炎症反応 上昇, 側頭動脈の圧痛 や 怒張 , 拍動の消失を確認する.

 2:脳血管障害としては 脳出血 や 脳梗塞 を考慮し, 動脈硬化のリスク を評価する.

 3:表在神経の障害として後頭神経痛や帯状疱疹を考慮する.

 痛みの性状が 神経痛様 で,場所が後頭部であれば 後頭神経痛 を,三叉神経領域に一致する場合は 帯状疱疹 を考慮する.

 帯状疱疹を疑えば 疼痛部位に水疱など皮疹 がないか確認する.ただし,皮疹は疼痛に遅れて出現することがあるため,帰宅時には疼痛部位に皮疹が出現しないか確認しておくことを伝える.

 高齢者になってから片頭痛など一次性頭痛を発症することは少ない.

→  追加検査例

 採血検査(CRP,ESR),水疱中抗VZV抗体,髄液検査,頭部CT,頭部MRI,頭部MRA,側頭動脈生検,FDG-PET

1-5 免疫不全の患者の頭痛

主な鑑別疾患

 髄膜炎 (発熱・炎症反応上昇,項部硬直,増悪傾向)

次の一手  頭部MRI,腰椎穿刺 →  抗菌薬投与,抗ウイルス薬投与,神経内科コンサルト

 脳膿瘍 (発熱・炎症反応上昇,増悪傾向,神経脱落症状)

次の一手  頭部CT,頭部MRI →  神経内科・脳神経外科コンサルト

 丹毒/蜂窩織炎 (発熱,頭痛,顔面の発赤・熱感・腫脹)

次の一手  血液培養,抗菌薬投与

 帯状疱疹 (神経痛,アロディニア,皮疹)

次の一手  抗ウイルス薬投与 →  皮膚科コンサルト

その他の鑑別疾患

 結核性髄膜炎,結核腫,真菌性髄膜炎,鼻脳型ムーコル症,トキソプラズマ脳炎,急性中耳炎,乳様突起炎,急性副鼻腔炎

ポイント

 免疫不全があれば頭蓋内感染症の可能性を考慮し,髄膜刺激徴候など評価する.

解説

 免疫不全のリスクがある患者で頭痛を認めれば, 1:頭蓋内感染症,2:頭蓋外感染症の可能性を考慮する.
 免疫不全があれば,感染症があっても発熱を呈さないことがあり,発熱がなくても中枢神経感染症の可能性を否定しない.

 1:頭蓋内感染症として 髄膜炎 や 脳膿瘍 を考え,必要に応じて以下の 髄膜刺激徴候 の有無を確認する.

 Jolt accentuation

 項部硬直

 ブルジンスキー徴候

 ケルニッヒ徴候

 ネックフレクションテスト

 細菌感染症以外に,通常は原因となりにくいような結核や真菌,原虫なども忘れない.

 2: 頭蓋外感染症として 丹毒 や 蜂窩織炎 , 帯状疱疹 を考慮する.

 頭頚部に熱感や腫脹をともなう 紅斑 があれば,丹毒や蜂窩織炎を考慮する.

 帯状疱疹を疑えば皮膚に 水疱 がないか確認する.疼痛に遅れて皮疹が出現することがあるため,帰宅時には疼痛部位に皮疹が出現しないか確認しておくことを伝える.

→  追加検査例

 採血検査(WBC, CRP),血液培養,髄液検査・培養,頭部CT,頭部MRI

1-6 いつもと異なる,精神・神経症状を認める頭痛

主な鑑別疾患

 髄膜炎・脳炎 (発熱,頭痛,炎症反応上昇,痙攣,意識レベル低下)

次の一手  髄液検査,頭部CT,頭部MRI,抗菌薬投与 →  感染症科・神経内科コンサルト

 脳腫瘍 (増悪傾向,吐気,神経症状)

次の一手  頭部CT,頭部MRI →  脳神経外科コンサルト

 くも膜下出血 (最悪の頭痛,くも膜下出血の家族歴,意識障害)

次の一手  頭部CT,頭部MRI,画像検査で陰性でも疑えば腰椎穿刺でキサントクロミーの確認 →  脳神経外科コンサルト

 脳梗塞 (神経脱落症状,動脈硬化のリスク)

次の一手  頭部CT,頭部MRI →  脳神経内科コンサルト

 脳出血 (急性発症,高血圧の既往,神経脱落症状)

次の一手  頭部CT,神経内科/脳神経外科コンサルト

その他の鑑別疾患

 片麻痺性片頭痛,脳底片頭痛,椎骨動脈解離,慢性硬膜下血腫,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS),可逆性後頭葉白質脳症(PRES),結核性髄膜炎,真菌性髄膜炎,脳腫瘍,脳静脈洞血栓症,硬膜下膿瘍,抗NMDA受容体脳炎,自己免疫性脳炎,てんかん発作後頭痛,尿毒症,MELAS症候群,可逆性脳梁膨大部病変

ポイント

 意識障害や麻痺,脱力などあれば頭蓋内病変の可能性を考慮し頭部画像検査(頭部CT,頭部MRIなど)を検討する.

解説

 以下のような症状がある場合,いつもと異なる精神,神経症状を伴う頭痛としてアプローチを検討する.

 意識障害

 麻痺

 脱力など

 いつもと異なる精神,神経症状があると判断すれば,1:頭蓋内感染症や2:頭蓋内腫瘍,3:脳血管障害など重篤な二次性頭痛の可能性を考慮する.

 1:頭蓋内感染症として 髄膜炎 , 脳炎 を考慮し,疑えば 発熱 , 炎症反応 上昇,以下の 髄膜刺激徴候 の有無を確認する.

 Jolt accentuation

 項部硬直

 ブルジンスキー徴候

 ケルニッヒ徴候

 ネックフレクションテスト

 2:頭蓋内腫瘍として 脳腫瘍 を考慮する.

 脳腫瘍に伴う頭痛は 朝方に増悪 するとされる. 悪性腫瘍の既往 を確認し,あれば 転移性脳腫瘍 や 髄膜癌腫症 などを考慮する.

 3:脳血管障害として くも膜下出血 や 脳梗塞 , 脳出血 の可能性を考慮する.

 突然発症 である, くも膜下出血の家族歴 がある場合はくも膜下出血の可能性を考慮する.

 脳梗塞,脳出血を疑えば,糖尿病や高血圧症,脂質異常症など 動脈硬化のリスク を確認する.

→  追加検査例

 採血検査(WBC, CRP),血液培養,髄液検査,髄液培養,髄液細胞診,頭部CT,頭部MRI

1-7 外傷後の頭痛

主な鑑別疾患

 急性硬膜下血腫 (受傷直後,嘔吐,CTにて三日月型)

次の一手  頭部CT →  脳神経外科コンサルト

 外傷性くも膜下出血 (受傷直後,意識障害)

次の一手  頭部CT →  脳神経外科コンサルト

 急性硬膜外血腫 (意識清明期(lucid interval),嘔吐,CTにて凸レンズ型)

次の一手  頭部CT →  脳神経外科コンサルト

 外傷後頭痛 (受傷7日以内発症,緊張型頭痛様)

次の一手  他疾患の除外 →  NSAIDs

 慢性硬膜下血腫 (高齢者,歩行障害,尿失禁,認知症)

次の一手  頭部CT →  脳神経外科コンサルト

その他の鑑別疾患

 頭蓋骨骨折

ポイント

 頭部外傷後の頭痛では,外傷直後の頭蓋内血管障害のみならず亜急性・遅発性の血管障害も考慮する.

解説

 外傷後の頭痛は頭蓋内出血を念頭に評価を進める.1:受傷直後に起こるもの,2:受傷後数時間~数日で起こるもの,3:受傷後数週間してから発症するものにわける.

 1:受傷直後に起こるものとして 急性硬膜下血腫 , 外傷性くも膜下出血 を考慮する.

 診断のためには 頭部CT を行う.軽度の頭部外傷では,以下の項目を一つでも満たす場合には頭部CTを考慮する( カナダ頭部CTルール [Lancet. 2001 May 5;357(9266):1391-6. doi: 10.] 

 外傷から2時間後のグラスゴー・コーマ・スケールが15未満である.

 頭蓋骨開放,または頭蓋骨陥没骨折を疑う所見がある.

 頭蓋底骨折を示唆する所見(パンダの目徴候,バトル徴候,髄液鼻漏など)がある.

 嘔吐を2回以上している.

 65歳以上である.

 30分以上の逆行性健忘がある.

 危険な受傷機転(自動車との接触,車外への放出,3フィート以上または5段以上からの転落)である.

 2:受傷後数時間~数日で起こるものとして 急性硬膜外血腫 と 外傷性頭痛 を考慮する.

 急性硬膜外血腫は意識清明期(lucid interval)後に意識障害を発症することがあるため,帰宅させる場合には慎重に経過観察し,様子がおかしければ速やかに医療機関を受診するように指示をする.

 3:受傷後数週間してから起こるものとして 慢性硬膜下血腫 がしわれている.

 特に 高齢者 で起こりやすく,帰宅時には頭痛や物忘れなど認知症様症状,尿失禁や歩行障害など神経症状が出現した場合は医療機関を受診するように指示する.

 頭部CTを撮像した場合は,以下の所見の有無を確認する.

 出血が三日月様であれば,硬膜下血腫を考慮する.

 出血が凸レンズ様ならば,硬膜外血腫を考える.

→  追加検査例

 頭部CT,頭部MRI

2-1 神経痛様頭痛

主な鑑別疾患

 後頭神経痛 (後頭部痛,神経痛様,トリガーポイントの確認)

次の一手  NSAIDs,筋弛緩薬,効果乏しければトリガーポイント注射

 帯状疱疹 (皮疹,アロディニア)

次の一手  抗ウイルス薬投与 →  皮膚科コンサルト

 三叉神経痛 (歯みがきなどトリガー,三叉神経領域)

次の一手  頭部MRI →  神経内科コンサルト

その他の鑑別疾患

 鼻毛様体神経痛,一過性表在頭痛,眼窩上神経痛,舌咽神経痛

ポイント

 神経痛様頭痛で,特にデルマトームに沿っている場合は帯状疱疹の可能性を考慮し皮疹の有無を確認する.

解説

 神経痛様の痛みでは表在神経の障害を考慮し,後頭部に分布する1:後頭神経の障害と,主に顔面に分布する2:三叉神経の障害を考慮する.

 1:後頭神経の障害では 後頭神経痛 の可能性を考慮し, トリガーポイント の有無を確認する.

 2:三叉神経の障害では 三叉神経痛 の可能性を考慮し,洗顔や歯磨きなど トリガー の有無を確認する.

 後頭神経領域,三叉神経領域いずれであっても 帯状疱疹 の可能性は考慮し,痛みに一致した部位に 皮疹 がないか確認する.

 疼痛に遅れて皮疹が出現することがあるため,帰宅時には疼痛部位に皮疹が出現しないか確認しておくことを伝える.

 三叉神経第1枝領域の帯状疱疹では,結膜炎や角膜炎など眼科合併症を呈しうるので ハッチンソン徴候 も確認する.

 ハッチンソン徴候とは,鼻背〜鼻尖部にかけての帯状疱疹の皮疹を認めることである.

→  追加検査例

 頭部CT,頭部MRI

2-2 眼周辺を中心とした頭痛

主な鑑別疾患

 急性緑内障発作 (中年女性,嘔気・嘔吐,眼球充血,視力低下,対光反射減弱,眼圧測定)

次の一手  縮瞳薬の点眼,アセタゾラミド内服,マンニトール点滴,眼科コンサルト

 群発頭痛 (自律神経症状,重度の頭痛,片側性)

次の一手  他疾患の除外 →  純酸素吸入,イミグラン点鼻薬

 帯状疱疹 (神経痛,皮疹,アロディニア)

次の一手  抗ウイルス薬投与 →  皮膚科コンサルト

 三叉神経痛 (神経痛,三叉神経領域,トリガーポイント)

次の一手  頭部MRI →  脳神経内科・脳神経外科コンサルト

その他の鑑別疾患

 頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作,結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作,発作性片側頭痛,持続性片側頭痛,副鼻腔炎,電気性眼炎,フォークト・小柳・原田病,眼精疲労

ポイント

 急性緑内障発作は眼症状ではなく頭痛や消化器症状を訴えることがあるので,疑えば眼圧を測定する.

解説

 眼周囲の頭痛では,解剖学的に1:眼疾患による痛み,2:支配する三叉神経関連の疾患による痛みを考慮する.
 1:眼疾患による頭痛としては, 急性緑内障発作 を考慮する.

 急性緑内障発作は主に中年女性に発症し, 結膜充血 や 視力低下 ,吐き気/嘔吐など 消化器症状 の有無を確認し,疑えば 眼圧測定 を行う.

 2:支配する三叉神経関連の疾患として 群発頭痛 , 三叉神経痛 , 帯状疱疹 の可能性を考慮する.

 群発頭痛では自律神経障害( 鼻閉 ・ 鼻汁 , 流涙 , 結膜充血 )の有無を確認する.

 三叉神経領域に一致している場合は,帯状疱疹または三叉神経痛の可能性を考慮する.

 帯状疱疹を疑えば皮膚に水疱がないか確認する.

 疼痛に遅れて皮疹が出現することがあるため,帰宅時には疼痛部位に皮疹が出現しないか確認しておくことを伝える.

 三叉神経痛を疑えば,洗顔や歯磨きなど トリガー の有無を確認する.

→  追加検査例

 眼圧測定,頭部CT,頭部MRI

2-3 自律神経性頭痛を示唆する頭痛

主な鑑別疾患

 群発頭痛 (片側性・重度の頭痛/眼窩痛,片側性の流涙/結膜充血など自律神経症状,短時間の発作を繰り返す)

次の一手  酸素投与,トリプタン皮下注・点鼻,脳神経内科/脳神経外科コンサルト

 急性緑内障発作 (中年女性,嘔気・嘔吐,眼球充血,視力低下,対光反射減弱)

次の一手  縮瞳薬の点眼,アセタゾラミド内服,マンニトール点滴,眼科コンサルト

その他の鑑別疾患

 頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作,結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作,発作性片側頭痛,持続性片側頭痛

解説

 頭痛における 自律神経症状 とは以下のような症状などを患側に認めることを意味する.

 結膜充血

 鼻閉・鼻汁

 流涙

 ホルネル徴候

 頭痛に自律神経性頭痛を伴う場合は三叉神経・自律神経性頭痛を示唆し,特に1: 群発頭痛 を考慮する.同じような症状を呈する疾患として2: 急性緑内障発作 を忘れない.

 1:群発頭痛はまれな一次性頭痛であり, 若年男性 に多く発症し, 必ず片側性 の 重度の頭痛 を繰り返す疾患である.

 痛みのために転げ回るなど生活に支障を来すほどである.

 2: 急性緑内障発作は主に中年女性に発症し, 結膜充血 や 視力低下 ,吐き気/嘔吐など 消化器症状 の有無を確認し,疑えば 眼圧測定 を行う.

→  追加検査例

 眼圧測定,頭部CT,頭部MRI

2-4 嘔気/嘔吐/食欲低下を伴う頭痛

主な鑑別疾患

 片頭痛 (光/音過敏あり,ADL障害あり,嘔気など消化器症状)

次の一手  他疾患の除外 →  NSAIDs投与.無効ならトリプタン製剤を検討

 ウイルス性/細菌性髄膜炎 (最悪の頭痛,増悪傾向,髄膜刺激徴候陽性)

次の一手  頭部CT,髄液検査 →  抗菌薬・抗ウイルス薬の投与

 脳出血 (急性発症,高血圧の既往,神経脱落症状)

次の一手  頭部CT,脳神経内科/脳神経外科コンサルト

 脳梗塞 (急性発症,神経脱落症状,動脈硬化のリスク)

次の一手  頭部CT/MRI,脳神経内科コンサルト

 くも膜下出血 (最悪の頭痛,くも膜下出血の家族歴,意識障害)

次の一手  頭部CT,頭部MRI,画像検査で陰性でも疑えば腰椎穿刺でキサントクロミーの確認 →  脳神経外科

コンサルト

 脳腫瘍 (転移性を含め)

次の一手  頭部CT/MRI,脳神経外科コンサルト

 急性緑内障発作 (中年女性,嘔気・嘔吐,眼球充血,視力低下,対光反射減弱)

次の一手  縮瞳薬の点眼,アセタゾラミド内服,マンニトール点滴,眼科コンサルト

その他の鑑別疾患

 椎骨動脈解離,急性硬膜下血腫,脳炎,下垂体卒中,髄膜癌腫症,可逆性後頭葉白質脳症(RPLS),心臓性頭痛,アルコール誘発頭痛,心臓性頭痛,ヒ素中毒,鉛中毒,良性頭蓋内圧亢進症,副腎皮質機能低下症,尿毒症,妊娠高血圧症,高血圧症,フォークト・小柳・原田病,熱中症,高山病,うつ病,身体症状症

解説

 吐き気や消化器症状を伴う頭痛では,1:一次性頭痛にともなうもの,2:頭蓋内感染症伴うもの,3:脳血管障害に伴うもの,4:脳腫瘍に伴うもの,5:眼科疾患に伴うものを考慮する.

 1:一次性頭痛に伴うものとして 片頭痛 を考慮する.

 反復性 の頭痛であること, 前兆 や 音過敏 , 光過敏 ,頭痛が 日常生活に支障 を来していることなどを確認する.

 2:頭蓋内感染症として ウイルス性/細菌性髄膜炎 の感染症を考慮する.

 発熱 や 炎症反応上昇 , 髄膜刺激徴候 の有無を評価する.

 3: 脳血管障害として 脳梗塞 や 脳出血 , くも膜下出血 などを考慮する.

 動脈硬化のリスクがあり, 急性 の経過で麻痺や歩行障害など 神経症状 を伴う場合は脳梗塞や脳出血を考慮する.

 突然発症 であり, くも膜下出血の家族歴 がある場合はくも膜下出血の可能性を考慮する.

 4: 脳腫瘍(転移性を含め)を考慮する.

 緩やかな発症であり,朝方頭痛,下方を向いたときに出現する場合考慮する.

 5:眼科疾患として 急性緑内障発作 を考慮する.

 結膜充血 や 視力低下 の有無を評価し,疑えば眼圧測定を行う.

→  追加検査例

 採血検査(WBC, CRP),眼圧測定,髄液検査,髄液培養,頭部CT,頭部MRI

2-5 鼻汁/鼻閉/先行する感冒症状を伴う頭痛

主な鑑別疾患

 急性副鼻腔炎 (先行する上気道症状,鼻閉・鼻汁,発熱,頭痛)

次の一手  副鼻腔叩打痛,鼻咽腔ファイバー,副鼻腔X線〔ウォーターズ,コールドウェル〕,鎮痛薬,中等症〜重症例は抗菌薬投与

 発熱に伴う頭痛 (肺炎,感冒,尿路感染症など)(他に発熱の原因がある,髄膜刺激徴候なし)

次の一手  髄膜炎を否定 →  原疾患に応じた治療

 群発頭痛 (片側性・重度の頭痛/眼窩痛,片側性の流涙/結膜充血など自律神経症状,短時間の発作を繰り返す)

次の一手  酸素投与,トリプタン皮下注・点鼻,脳神経内科/脳神経外科コンサルト

その他の鑑別疾患

 鼻毛様体神経痛,鼻脳型ムーコル症

解説

 鼻閉,鼻汁を伴う場合は,1:副鼻腔を中心とした感染症や,2:一次性頭痛である三叉神経・自律神経性頭痛を考慮する.

 1:感染症として副鼻腔炎や発熱に伴う頭痛を考慮する.

 感冒後に 二峰性 に症状が出現する場合は急性副鼻腔炎の可能性を考慮する.

 上顎洞炎と前頭洞炎は単純X線検査で評価しやすいが,蝶形骨洞炎など深部の副鼻腔炎の評価はCTでないと難しいこともある.

 2:群発頭痛はまれな一次性頭痛であり, 若年男性 に多く発症し, 必ず片側性 の 重度の頭痛 を繰り返す疾患である.

 痛みのために転げ回るなど生活に支障を来すほどである.

→  追加検査例

 採血検査(WBC, CRP),副鼻腔X線,鼻腔内視鏡

2-6 誘因の明確な頭痛

鑑別疾患

 飲酒・カフェイン摂取・月経・精神的ストレスで誘発

→  片頭痛

 顔面への刺激で誘発

→  三叉神経痛,結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT),頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNA),舌咽神経痛(嚥下や咀嚼),鼻毛様体神経痛,後頭神経痛

 労作で誘発

→  労作性頭痛(運動性頭痛含む),心臓性頭痛(虚血性心疾患に伴う頭痛を示唆する)

 性交で誘発

→  性交時頭痛

 入浴で誘発

→  入浴時頭痛,可逆性脳血管攣縮症候群

 ガスストーブ・練炭で誘発

→  一酸化炭素中毒

 登山で誘発

→  高山病

 バルサルバ手技

→  褐色細胞腫,脳腫瘍,一次性咳嗽頭痛,脳圧亢進状態(頭蓋内腫瘍,特発性頭蓋内圧亢進症,水頭症など),キアリ奇形,舌咽神経痛

 頭部の動作で誘発

→  脳腫瘍(屈曲),頚椎偽痛風,副鼻腔炎(前屈),茎状突起過長症(イーグル症候群)

 立位で誘発

→  低髄液圧症候群,第三脳室コロイドのう胞,腰椎穿刺後の頭痛

 アイスクリームで誘発

→  寒冷刺激による頭痛

 睡眠で誘発

→  睡眠時無呼吸症候群,睡眠時頭痛,脳腫瘍

 薬剤の中止 /作用消失時で誘発

→  薬物乱用頭痛

 薬物の使用で誘発

→  MCTDに対するNSAIDs使用

解説

 頭痛を誘発する動作やイベントは,頭痛を診断する上で有用な所見である.

 片頭痛の誘因はストレス,光を浴びる,臭い,気圧・温度の変化の他,アルコール,カフェイン,チョコレートの摂取,疲労,睡眠不足などが多い.

 三叉神経痛の誘発因子は,歯磨き,洗顔,ひげそり,咀嚼,櫛で髪をとかすことが知られており,トリガーと表現されることがある.

 頭部を前屈して頭痛が出現する場合は急性副鼻腔炎の可能性を考える.

 バルサルバ手技とは,排便や排尿,咳嗽など,いきむような動作のことであり,これらの動作で誘発される場合は頭蓋内圧が更新している可能性を考慮する.

 入浴で誘発される頭痛は,入浴時頭痛や可逆性脳血管攣縮症候群を考慮する [Bath-Related Thunderclap Headache: A Study of ZI Consesutivepatients. Cephalalgia 28(5), 524, 2008] 

→  追加検査例

 頭部CT,頭部MRI,髄液検査

2-7 後頭部の頭痛

主な鑑別疾患

 後頭神経痛 (後頭部痛,神経痛様,トリガーポイントの確認)

次の一手  NSAIDs,筋弛緩薬,効果乏しければトリガーポイント注射

 くも膜下出血 (最悪の頭痛,くも膜下出血の家族歴,意識障害)

次の一手  頭部CT,頭部MRI,画像検査で陰性でも疑えば腰椎穿刺でキサントクロミーの確認 →  脳神経外科コンサルト

 椎骨動脈解離 (頭部後屈/回旋後発症,突発,神経症状あり)

次の一手  頭部MRI,頭部MRA →  脳神経内科,脳神経外科にコンサルト

 ウイルス性/細菌性髄膜炎 (最悪の頭痛,増悪傾向,髄膜刺激徴候陽性)

次の一手  頭部CT,髄液検査 →  抗菌薬・抗ウイルス薬の投与

 頚椎偽痛風 (高齢者,発熱/炎症反応上昇,頚部可動域制限)

次の一手  頚椎X線,頚椎CT,NSAIDs投与

その他の鑑別疾患

 副鼻腔炎,巨細胞性動脈炎,キアリ奇形,心臓性頭痛

解説

 後頚部の頭痛では1:表在神経の障害,2:頭蓋内血管病変,3:感染症/炎症性疾患の可能性を考慮する.

 1:表在神経の障害として 後頭神経痛 の可能性を考慮し,痛みの性状が 神経痛様 であるか,大後頭神経と小後頭神経の 圧痛 を確認する.後頭神経痛の頻度は高い.

 2:頭蓋内血管障害として 椎骨動脈解離 や くも膜下出血 の可能性を念頭に評価を進める.

 突発発症 の頭痛であればくも膜下出血の可能性を考慮する.

 めまいや失調など 神経症状 を伴い, 頚部運動後 に発症しているようであれば椎骨動脈解離を考慮する.

 3:感染症/炎症性疾患として髄膜炎と頚椎偽痛風の可能性を考慮する.

 発熱 や 炎症反応上昇 伴う場合は髄膜炎の可能性を考慮し, 髄膜刺激徴候 の有無を確認する.

 高齢者 で 頚部可動域制限 を伴う場合は頚椎偽痛風の可能性を考慮する.

→  追加検査例

 頚椎X線〔正面,側面〕,頚椎CT,頭部CT,頭部MRI,髄液検査,髄液培養

2-8 不眠/ムード低下/喜びの喪失を伴う頭痛

主な鑑別疾患

 うつ病による頭痛 (意欲の低下,興味の消失,不眠)

次の一手  2次性の抑うつ状態の除外 →  精神科・心療内科コンサルト

 睡眠時無呼吸症候群 (いびき,日中の眠気,肥満)

次の一手  Epworth sleepness scale →  ポリソムノグラフィー

 身体症状症 (ドクターショッピング,ADL障害,多愁訴)

次の一手  器質疾患の除外,精神科コンサルト

その他の鑑別疾患

 特になし

解説

 抑うつ気分や不眠を認める場合は,1:身体的要素か原因の不眠と2:心因的な要因の不眠を考慮する.

 1:身体的要素が原因の頭痛では 睡眠時無呼吸症候群 を考慮し,日中の眠気や夜間にいびきを確認する.

 2:心因的要素が原因の頭痛では, うつ病 や 身体症状症 を考慮する.

 うつ病の患者が身体症状を訴えて内科の外来に受診をすることがある.

 うつ病を疑えばスクリーニングとして 気分の落ち込み , 興味の喪失 を問診する.

 うつ病の可能性が高ければ希死念慮を確認し,具体的な自死の計画を立てているときは精神科へコンサルトする.

 身体症状症を疑えば ドクターショッピング の有無やほかの身体症状,訴えと症状の解離など確認する.

→  追加検査例

 ポリソムノグラフィー

2-9 朝方に悪化する頭痛

主な鑑別疾患

 群発頭痛 (自律神経症状,重度の頭痛,片側性)

次の一手  他疾患の除外 →  純酸素吸入,イミグラン皮下注

 脳腫瘍 (増悪,吐気,神経症状)

次の一手  頭部CT,頭部MRI →  脳神経外科コンサルト

 睡眠時無呼吸症候群 (いびき,日中の眠気,肥満)

次の一手  Epworth sleepness scale,ポリソムノグラフィー

 低血糖 (動悸・頻脈・発汗,イライラ,意識障害)

次の一手  血糖測定,ブドウ糖投与,低血糖の原因検索

 アルコール誘発頭痛 (直前の飲酒)

次の一手  アルコール多飲歴の確認 →  対症療法

 うつ病による頭痛 (意欲の低下,興味の消失,不眠)

次の一手  2次性の抑うつ状態の除外,精神科・心療内科コンサルト

その他の鑑別疾患

 片頭痛

解説

 朝方に発症する頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分けて考慮する.

 朝方に発症する頭痛は一次性頭痛としては 群発頭痛 を考慮する.

 朝方に悪化する二次性頭痛としては 脳腫瘍 , 睡眠時無呼吸症候群 , 低血糖 を考慮する.

 脳腫瘍で朝方に頭痛が増悪するのは,低換気によりCO が貯留し頭蓋内圧が亢進するためとされる.

 睡眠時無呼吸症候群を疑う場合, 日中の眠気 や 夜間にいびき を確認する.

 低血糖を疑えば 糖尿病治療歴 や 発汗 や 動悸 , 空腹感 などの低血糖症状の有無を確認する.

 うつ病を疑えばスクリーニングとして 気分の落ち込み , 興味の喪失 を問診する.

 アルコール多飲後の翌日 の頭痛では遅延性アルコール誘発頭痛を考慮する.

→  追加検査例

 採血検査(血糖含む),ポリソムノグラフィー,頭部CT,頭部MRI

3-1 片頭痛様の頭痛

主な鑑別疾患

 片頭痛 (光・音,臭過敏,ADL障害あり,消化器症状あり)

次の一手  他疾患の除外 →  NSAIDsまたはトリプタン製剤の使用

 片頭痛と緊張型頭痛の併存 (片頭痛に追加して,両側性,締めつけ感,ADL障害なし)

次の一手  他疾患の除外 →  片頭痛の治療に加えて痛み止め,筋弛緩薬投与

その他の鑑別疾患

 皮質下梗塞と白質脳症を伴った常染色体優性脳血管症(CADASIL),後頭葉てんかん,脳脊髄液リンパ球増加を伴う一過性頭痛および神経学的欠損症候群(HaNDL症候群),

解説

 片頭痛は頻度が高く,その特徴を熟知することは頭痛診療において有用であり,以下の特徴を確認する.

 前兆(閃輝暗点など),

 過敏症状(音過敏,光過敏,臭過敏)

 消化器症状(吐き気,嘔吐,食欲低下など)

 日常生活への支障度(寝込む,学校生活や仕事への影響)

 頭痛時は暗所で安静にしていることが多い

 緊張型頭痛は頻度が高く,しばしば片頭痛と合併していることがある.

→  追加検査例

 初発時は頭部CT,頭部MRI

3-2 反復性の頭痛

主な鑑別疾患

 片頭痛 (光/音/臭過敏,ADL障害,嘔気など消化器症状,アロディニア)

次の一手  他疾患の除外 →  NSAIDs投与.無効ならトリプタン製剤を検討

 緊張型頭痛 (肩こり・ストレスで増悪,ADL障害なし)

次の一手  他疾患の除外 →  痛み止め,筋弛緩薬投与

 群発頭痛 (片側性・重度の頭痛/眼窩痛,片側性の流涙/結膜充血など自律神経症状,短時間の発作を繰り返す)

次の一手  酸素投与,トリプタン皮下注・点鼻,脳神経内科/脳神経外科コンサルト

 後頭神経痛 (後頭部,神経痛)

次の一手  トリガーポイント確認 →  痛み止め,筋弛緩薬,トリガーポイント注射

 三叉神経痛 (神経痛,三叉神経領域,トリガーポイント)

次の一手  頭部MRI,脳神経内科/脳神経外科コンサルト

その他の鑑別疾患

 発作性片側頭痛,持続性片側頭痛,頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作,結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作,一次性咳嗽性頭痛,一次性運動時頭痛,寒冷刺激による頭痛,一次性穿刺様頭痛,貨幣状頭痛,性行為に伴う一次性頭痛,睡眠時頭痛,クラスター・チック症候群,新規発症持続性連日性頭痛,舌咽神経痛,モラレ髄膜炎,脳脊髄液リンパ球増加を伴う一過性頭痛および神経学的欠損症候群(HaNDL症候群)

解説

 反復している頭痛は,1:一次性頭痛に伴うものと,2:二次性頭痛に伴うものを考慮する.

 1:一次性頭痛の代表として, 片頭痛 と 緊張型頭痛 , 群発頭痛 を考慮する.

 片頭痛を疑えば 前兆 や 音過敏 , 光過敏 ,頭痛が 日常生活に支障 を来していることなどを確認する.

 緊張型頭痛を疑えば 肩こり や 夕方に増悪 する頭痛などを確認する.

 群発頭痛を疑えば 若年男性での発症 であること,必ず 片側性 の 重度の頭痛 で鼻汁,流涙など 自律神経症状 を伴い, 繰り返している ことを確認する.

 2:二次性頭痛として1:後頭神経痛,三叉神経痛を考慮する.

 性状は神経痛様のことが多く,持続時間の短い頭痛を1日に何度も繰り返していることが多い.

 後頭神経痛を疑えば大後頭神経と小後頭神経の 圧痛 を確認する.後頭神経痛の頻度は高い.

 三叉神経痛を疑えば,洗顔や歯磨きなど トリガーの有無 を確認する.

→  追加検査例

 初発時は頭部CT,頭部MRI

common 日常診療でよくある原因

主な鑑別疾患

 緊張型頭痛 (締め付けられるような頭痛,ストレスで悪化,ADL障害なし)

次の一手  問診で診察,NSAIDsによる治療

 片頭痛 (片側,拍動性,嘔気・嘔吐,ADL障害)

次の一手  問診で診察,トリプタン製剤による治療

 後頭神経痛 (持続時間数秒,ピリピリ,片側後頭部)

次の一手  問診で診察,カルバマゼピンによる治療

 副鼻腔炎 (先行感冒,鼻汁鼻閉)

次の一手  副鼻腔X線,副鼻腔CT

 うつ病による頭痛 (気分の落ち込み,興味喪失,不眠)

次の一手  DSM-Vにのっとり診断,SSRIなどによる治療

その他の鑑別疾患

 特になし

解説

 日常診療でよくある原因として,1:一次性頭痛と2:二次性頭痛に分けて考慮する.

 1:一次性頭痛として 片頭痛 , 緊張型頭痛 を考慮する.

 片頭痛は頻度が高く, 前兆 や 光過敏 , 音過敏 , 嘔気 , 嘔吐 を伴い, 日常生活に支障 があるような頭痛で疑う.

 筋緊張頭痛は 午後に増悪 する, 締め付けられるような痛み で,日常生活に支障が少ない.

 2:二次性頭痛として 後頭神経痛 や 副鼻腔炎 , うつ病による頭痛 を考慮する.

 後頭神経痛は, 神経痛 様の痛みが 後頭部 に何度も繰り返す.

 先行感冒 があり, 鼻閉 ・ 鼻汁 を伴う場合は副鼻腔炎を疑う.

 うつ病 では男性の14.2%,女性の15.2%が頭痛を訴える. [Psychiatry Res 2004 Oct 30: 128(3):305: 11]

→  追加検査例

 副鼻腔X線,(初発時)頭部CT,頭部MRI

図表

図表2 頭痛のアルゴリズム図

図表3 レッドフラッグサインの評価

評価

問診

身体診察

大事な検査

コメント・参考資料

 レッドフラッグサイン
 突然発症,今までと異なる,50歳以上初発,悪化傾向,発熱,癌・免疫不全の既往,外傷歴
 血圧上昇,項部硬直,意識障害,局所神経障害,精神症状
 頭部CT,頭部MRI,髄液検査
 採血での炎症反応なども有用

図表4 突発性の頭痛のアルゴリズム

 突然発症の頭痛では,脳血管障害(特にくも膜下出血)の可能性を考慮し,頭部CT検査を検討する.

 頭部CTで所見を認めなくても,臨床的にくも膜下出血を強く疑う場合は髄液検査または頭部MRIを考慮する.

 髄液検査,頭部MRIでくも膜下出血以外の二次性頭痛を疑う所見を認めなければ,突然発症する一次性頭痛(一次性雷鳴頭痛など)を検討する.

図表5 発熱・炎症を伴う頭痛のアルゴリズム

 発熱,炎症反応上昇を認める場合は髄膜炎の可能性を考慮し,髄膜刺激徴候の有無を確認する.

 Jolt accentuation

 項部硬直

 ブルジンスキー徴候

 ケルニッヒ徴候

 ネックフレクションテスト

 髄膜刺激徴候を認めれば髄膜炎の可能性を考慮し,髄液検査を検討する.

 髄膜炎が否定的であれば,ほかの頭蓋内感染症や頭蓋外感染症の可能性を考慮する.
 高齢者では,失明を来す可能性があるため巨細胞性動脈炎の可能性を考慮し,以下を確認する.

 側頭動脈の圧痛

 側頭動脈の怒張

 側頭動脈拍動の消失

図表6 痛みの部位

 頭痛の部位により,鑑別を絞ることができる.

 眼窩周囲の痛みでは帯状疱疹や三叉神経痛,急性緑内障発作,群発頭痛,副鼻腔炎などを考慮する.

 頭頂部の痛みでは副鼻腔炎や一次性穿刺様頭痛,一過性表在頭痛など考慮する.

 前頭部の痛みでは緊張型頭痛や副鼻腔炎などを考慮する.

 後頭部の痛みでは後頭神経痛や緊張型頭痛,くも膜下出血などを考慮する.

 片側性の頭痛では片頭痛や帯状疱疹,三叉神経痛,群発頭痛などを考慮する.

 両側性の頭痛では緊張型頭痛を考慮する.

図表7 頭痛の時間経過

 頭痛の時間経過は,その病態と背景疾患を推察する上で有用である.

 神経痛様の痛みでは三叉神経痛など神経痛を考慮する.

 突然起きた頭痛ではくも膜下出血など血管病変を考慮する.

 徐々(数時間~数日)に悪化する頭痛では感染症に伴う頭痛など考慮する.

 ゆっくりと悪化する頭痛では脳腫瘍など考慮する.

 波のある,持続性の頭痛では緊張型頭痛などを考慮する.

 たまに起きる頭痛では片頭痛などを考慮する.

 たまにまとまっておきる頭痛では群発頭痛等を考慮する.

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